北条和馬は、最近の出来事が心に引っかかっていた。友人たちの間に流れる微妙な空気、そして特に相馬瑛士と椎名悠真の関係の変化を感じ取っていた。教室でも、昼休みでも、和馬は二人をちらりと見つめながら自分自身の気持ちに気づかされていた。
「俺、何を気にしてるんだろう…」
和馬は小さくため息をついた。
その日の放課後、和馬は誰にも声をかけずにグラウンドの隅にあるベンチに腰を下ろした。静かな夕暮れ、オレンジ色の光が彼の足元に影を落としていた。自分でも整理しきれない感情が胸の中で渦巻いている。
「北条、こんなところにいたのか。」
突然の声に驚いて振り返ると、そこには相馬瑛士が立っていた。彼の表情はいつもと変わらないように見えたが、その目には何かを探るような光があった。
「お前こそ、サッカーの練習はどうしたんだよ?」和馬は軽く笑いながら言ったが、その笑顔はどこかぎこちない。
「今日は、休みにしたんだ。」瑛士はベンチに座りながら言葉を続けた。「お前、最近元気ないみたいだな。何かあったのか?」
和馬は一瞬、答えに詰まった。そして、今まで誰にも話したことのない自分の本当の気持ちを口にしようかと迷ったが、すぐにその思いを飲み込んだ。
「別に、何もないよ。」和馬は無理やり笑顔を作りながら答えた。「ただ、色々考えることがあってさ。」
「そっか。」瑛士はそれ以上問い詰めることなく、ただ和馬の隣に座り、夕焼けを眺めていた。その静かな時間が、和馬にとっては心地よかった。
「俺も…自分の気持ちが分からなくなることがあるんだ。」瑛士の言葉に、和馬は少し驚いた。いつも堂々としている瑛士が、そんな弱さを見せるとは思わなかったからだ。
「でも、お前がいるから、俺は前に進める気がする。」瑛士の言葉に、和馬の胸が少しだけ温かくなった。彼は小さく頷きながら、心の中で自分自身に問いかけた。「俺も、もう少し自分に正直になってもいいのかもしれない。」
次回予告:
友情と愛情の狭間で揺れる和馬は、瑛士との時間を通して少しずつ自分の気持ちに向き合い始める。次回、和馬が自分自身と向き合うことで、新たな展開が待ち受ける。
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