北条和馬は、教室の窓辺に立ちながら、外で風に揺れる木々を眺めていた。ここ最近、自分の中で膨らんでいく椎名悠真への想いが、止めどなく溢れ出すのを感じていた。そんな時、ふと教室の扉が開き、相馬瑛士が入ってきた。
「北条、ちょっといいか?」
「うん、何かあった?」
瑛士の真剣な表情に、和馬も自然と気持ちを引き締める。二人は教室を出て、屋上へと向かった。そこで瑛士は深呼吸をし、静かに言葉を紡ぎ始めた。
「お前…最近、椎名とよく一緒にいるよな」
「え…?」
瑛士の言葉に、一瞬動揺する和馬。しかし、次の言葉が続かない彼の表情を見て、瑛士は微笑んだ。
「安心しろよ。別に責めるつもりなんてない。ただ、お前が何か悩んでるように見えたからさ」
「瑛士…」
その優しい言葉に、和馬の心は少しずつ解きほぐされていく。彼は、これまで誰にも話せなかった自分の気持ちを、瑛士には話してもいいと思った。
「実は…椎名といると、何もかも忘れられるんだ。けど、それが怖いんだよ。自分でも何が正しいのかわからなくて…」
「それが恋ってやつじゃないか?」
瑛士の一言に、和馬の心は強く揺さぶられた。そして同時に、自分の中にある気持ちを素直に受け入れる覚悟が生まれた。
「ありがとう、瑛士。君のおかげで少し楽になったよ」
「いつでも頼れよ、北条。俺たちは仲間だ」
その言葉に、和馬は瑛士に向けて笑顔を見せた。その瞬間、屋上の風が二人を包み込み、まるで彼らの友情を祝福しているかのようだった。
一方、椎名悠真は図書室で一人、和馬のことを考えていた。彼の心にもまた、交錯する想いが広がっていく――。
次回予告
椎名悠真と北条和馬、それぞれの想いが交錯する中、彼らの関係は新たな局面を迎える。次回、二人が選ぶ道は果たして…?
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