第十二話:「儚き涙の行方」

ストーリー

椎名悠真は、北条和馬の言葉が心に刺さり、そのまま抜けなくなっていた。自分の感情をうまく表現できないもどかしさと、彼への思いが絡み合い、ますます自分を縛りつけている気がしていた。

一方、和馬もまた、悠真に伝えた言葉を後悔していた。教室で彼を見つめるたびに、その目には深い孤独が宿っているのがわかる。和馬は、悠真が求めているものに気づけない自分に苛立ちを感じ、何度も彼に近づこうとするが、そのたびに言葉を失ってしまうのだった。

ある日、放課後の図書室で二人は再び出会った。悠真は、あの日から避けるようにしていた和馬を無意識のうちに探していた。そして、その視線が交わる瞬間、和馬は勇気を振り絞り、悠真に声をかけた。

「椎名、あのとき言ったこと……ごめん。君の気持ちをちゃんと理解してあげられなくて」

その言葉に悠真は驚き、そしてゆっくりと首を横に振った。「僕の方こそ、伝えたいことをうまく伝えられなくて……」

和馬は優しく彼の手を取り、その手の温もりが二人の距離を縮めていく。「これからは、もっと君を知りたい。だから、もう一度…やり直せないかな?」

涙が悠真の頬を伝った。「和馬……僕も、君のことをもっと知りたいよ」

二人の心が、ようやく一つに重なった瞬間だった。


次回予告

和馬と悠真の距離が縮まり始めた二人。しかし、その関係に新たな試練が待ち受けていた。次回、物語はさらなる深みへ――。

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