放課後の図書館には、静寂が漂っていた。北条和馬は、椎名悠真の隣に座りながら、ぼんやりと本を手に取っていたが、ページをめくる手は止まっていた。
「なあ、椎名…」和馬はゆっくりと話し始めた。
「お前、俺みたいに周りに合わせて笑うの、疲れないか?」
悠真は本から目を離さずに、落ち着いた声で返事をした。「俺は、無理に笑わないからな。」
その言葉に、和馬は少し戸惑ったが、同時にその冷静さに憧れを感じた。和馬はずっと、周りの期待に応えるために笑顔を作り続けてきたが、悠真はそんな自分とは全く違う存在に思えた。
「お前は…強いな」と、和馬はつぶやいた。
悠真は初めて顔を上げ、和馬の方を見つめた。「誰だって、心の中に何かを抱えてる。それをどう向き合うかは、自分次第だ。」
和馬はその言葉に、何かを感じ取った。今まで自分を守るために作り上げてきた「笑顔」という仮面が、少しずつ崩れていくような感覚だった。
二人の間に流れる静けさが、言葉以上に深い理解を生んでいた。悠真は和馬の孤独を感じ取りながらも、無理に問い詰めることはせず、ただそばにいるだけで支えとなっていた。
和馬は、自分が初めて誰かに心を開き始めていることに気づいた。そして、それが悠真であることに、どこか安心感を覚えていた。
「ありがとう、椎名…お前には、何か救われてる気がする。」
悠真は特に返事をせず、ただ静かに微笑んだ。
次回予告:
北条和馬と椎名悠真の関係がさらに深まり、互いに支え合う存在となっていく。次回、彼らが選ぶ道とは?
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