放課後の教室、柔らかな夕陽が差し込む中、椎名悠真と透は一言も発さずに座っていた。昨日の出来事が二人の間に残した静かな空気は、重くもどこか温かいものだった。視線を交わすこともできず、ただお互いの存在を確かめるように、微かに鼓動が重なるのを感じていた。
「…悠真、昨日のことだけど…」透が静かに口を開いた。声はかすれ、どこか不安が滲んでいたが、確かな決意がその言葉に宿っていた。
悠真は透の顔を見つめ、その目に映る微かな影を見逃さなかった。二人の間に広がる距離を縮めるべきなのか、それとも一歩引いて見守るべきなのか、悠真は戸惑っていた。
「透、俺…お前のこと、もっと知りたいんだ。けど、無理に近づきたくない。」悠真は正直に気持ちを伝えた。透のことを大切にしたい、傷つけたくない。その一心で絞り出した言葉だった。
透は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに優しい笑みを浮かべた。「ありがとう、悠真。そう言ってもらえると、俺も…安心する。」
その瞬間、二人の距離が自然と縮まり、互いの手が重なった。悠真の手は透にとって温かく、また、彼自身の心の不安も和らげていくようだった。
無言のまま、二人はしばしその場に留まった。悠真の胸には、新たな決意が芽生えていた。透のことを守りたい。彼の隣にずっといたい。それがどれほど複雑なものであっても、今ならきっと向き合える。
次回予告
悠真の決意が固まった一方で、透もまた自分の感情に気付き始める。二人が向き合うことで、さらに深まる絆と互いの理解がどのように展開するのか。次回は、新たな展開が待ち受ける。
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