ある日の放課後、相馬瑛士はグラウンドで一人でサッカーの練習をしていた。いつものように無心でボールを蹴ることで、自分の中に溜まったモヤモヤを消そうとしていた。
「こんな時間まで練習なんて珍しいな。」
突然声をかけられ、瑛士は驚いて振り返った。そこには椎名悠真が立っていた。
「なんだ、椎名か。お前も帰りが遅いじゃないか?」瑛士はボールを蹴りながら応じる。
「うん、ちょっと図書館で読んでた本が面白くてね。」悠真は微笑んだが、その目は瑛士の様子を鋭く見つめていた。
二人はしばらく沈黙したままグラウンドに立っていたが、悠真がふと口を開いた。「瑛士、お前、最近ちょっと変だよ。」
その言葉に瑛士はドキッとした。けれども、すぐに笑顔でごまかそうとする。「別に、何も変わってないよ。」
「嘘だよ。」悠真はまっすぐ瑛士を見つめる。「俺には分かるんだ。お前、無理してるだろ?」
瑛士はその言葉に戸惑いを隠せなかった。今まで誰にも見せなかった本当の自分を、悠真は見抜いていたのだ。
「お前には…見透かされちゃうな。」瑛士はポツリと呟いた。「俺、本当は…分からないんだ。自分の気持ちが。」
悠真は優しく頷いた。「無理に答えを出す必要なんてないさ。でも、お前がどんなに強がっても、俺はお前のそばにいるよ。」
その言葉に、瑛士は初めて心が軽くなるのを感じた。誰かが自分を理解してくれる、その感覚が何よりも温かかった。
次回予告:
瑛士と悠真の関係は、新たな一歩を踏み出す。友情と愛情の境界線が曖昧になる中、二人は本当の自分を見つける旅に出る。
コメント