第十三話:「深紅の絆」

ストーリー

椎名悠真は、北条和馬の温かい眼差しに背中を押されるように、少しずつ自分の気持ちを言葉にする勇気を持ち始めていた。屋上で和馬に「ありがとう」と伝えたその瞬間、悠真の心に一筋の光が差し込むような感覚があった。

「…和馬、君と話すと、いつも心が救われるんだ。」

その言葉に驚いた和馬は、一瞬視線を彷徨わせたが、すぐに微笑みを浮かべて悠真の瞳を見つめ返した。

「それは、俺も同じだよ。悠真がいると、俺も自分を取り戻せるんだ。」

互いの想いが交わるその瞬間、風が強く吹き抜け、二人の間に咲く小さな花びらが舞い散った。だが、その穏やかな時間も束の間だった。

突然、教室から声が響き渡る。「和馬、ちょっと来てくれないか?」

声の主は、和馬の幼なじみである篠原仁。彼の表情はいつもと違い、険しさを纏っていた。和馬は一瞬困惑したが、悠真に「ちょっと待ってて」と言い残し、その場を離れた。

悠真は胸のざわつきを感じながら、和馬と篠原の後を追いかけた。廊下の先で、二人の話が聞こえてきた。

「和馬、お前、本気で椎名と付き合うつもりなのか?」

「それがどうした?」

「お前が彼といることで、どれだけの問題が起きるか、分かってるのか?」

篠原の言葉は鋭く、和馬の心を刺すようだった。しかし和馬は怯むことなく答えた。

「俺は悠真を守りたい。それだけだ。」

その言葉に胸が熱くなり、思わず廊下の陰から飛び出してしまった悠真。篠原と和馬、そして悠真の視線が交錯する。

「俺は、和馬と一緒にいたい。どんな困難があっても…」

篠原は一瞬、驚いたように目を見開いたが、すぐに冷静さを取り戻し、ふっと笑った。「なら、覚悟しておけよ。簡単な道じゃないぞ。」

次第に遠ざかる篠原の背中を見つめながら、悠真と和馬はそっと手を握りしめ合った。二人の心は、確かな絆で結ばれ始めていた。


次回予告

篠原の言葉が投げかけた波紋は、和馬と悠真の関係をさらなる試練へと導いていく。しかし、二人が手を取り合うことで、新たな道が見え始める。次回、「二人だけの秘密」が明らかに…。

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