夕暮れの図書室。閉館の時間が迫る中、椎名悠真は一心不乱にノートに向かって文字を書き連ねていた。その筆跡には迷いがなく、まるで自分の中で沸き上がる想いを整理するかのように、淡々とした手つきで書き続ける。その静寂を破ったのは、透がそっと椎名の隣に座る音だった。
「椎名君、まだ残っていたんだね」
透の優しい声に、悠真はふと手を止め、視線を上げる。夕陽に照らされた透の顔はどこか穏やかで、けれどその瞳には複雑な感情が宿っていた。彼もまた、自分の中で何かを見つめ直していたのだろう。
「君がこの前言ったこと、ずっと考えてたんだ。僕…どうしても向き合うべきことがあるんだって、気づいたよ。」
透の言葉に悠真はわずかに眉を寄せる。まるで自分の心を見透かされたようで、戸惑いと微かな緊張が湧き上がった。それでも悠真は、透の言葉にじっと耳を傾ける。
「僕も…正直、自分の気持ちに自信が持てなかった。でも、君がいつも隣にいてくれて、支えてくれたからこそ、ここまで来られたと思うんだ。」
透の小さな呟きに、悠真の胸は不思議な温かさに包まれた。言葉では表現できない、しかし確かに存在する感情が二人の間に流れていた。それは、他人では理解し得ないような、彼らだけの特別な絆。
「…透、俺もずっと一緒にいたい。君の力になりたいんだ。」
悠真の静かな告白に、透は思わず息を呑んだ。その目には、確かな決意と、未来への希望が映っている。二人の間に何も言葉はなくても、もう充分に通じ合っている。彼らの距離が、ただの友人以上のものへと変わっていく瞬間だった。
次回予告: 図書室で互いに想いを確認した悠真と透。しかし、新たな試練が二人を待ち受けている。果たして彼らはこの困難を乗り越え、さらに強い絆を築くことができるのか?
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