放課後の音楽室で、悠真と凌が向かい合って座っていた。静かな空気が、互いの鼓動の速さを際立たせている。凌が微かに頬を染め、口を開く。
「…悠真、俺さ、なんか最近、考えることがあって…」
凌が口にしたのは、過去の失敗や彼が抱える不安についてだった。スポットライトを浴びるプレッシャーや、彼が他人に与える影響の大きさ、それに対する責任感が重荷になっていたのだ。悠真はじっと彼の言葉に耳を傾け、どんな小さなため息も聞き逃さないように集中していた。
「俺、ずっと強く見せたかったんだ。だから、弱音なんて言えなかった。でも…悠真には、話せる気がして…」
凌の告白は、彼の素直な気持ちが言葉となって流れ出たものであり、悠真の心に深く響くものだった。悠真は眼鏡越しに凌の真剣な表情を見つめ、穏やかな声で応じる。
「凌、君がどう感じているのか聞けて嬉しい。俺も、誰かのために生きているような気がしてたけど、それじゃ本当の自分を見失ってしまう。君には、君のままでいてほしい」
静寂が再び音楽室を支配する中、ふと悠真がギターを手に取る。指で弦を弾き、静かに歌い出す。その歌声は凌にとって特別で、どこか慰めを感じさせる優しい響きだった。
「この歌、君のために作ったんだ」
凌の胸に、悠真の想いがストレートに伝わってくる。歌が終わる頃には、凌の目には涙が滲んでいた。しかし、それは悲しみではなく、安心と信頼に満ちた涙だった。
「…ありがとう、悠真」
互いの距離がいつの間にか近くなり、凌の手が悠真の手にそっと触れる。その瞬間、二人の想いが確かに重なり、言葉では表せない温もりが生まれる。
次回予告
凌と悠真の間に育まれる絆は、これから二人をどこへ導くのか。新たな一歩を踏み出す彼らの物語がさらに進展していく。
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