相馬瑛士は、サッカーの練習が終わった後、夕焼けに染まるグラウンドに立っていた。部員たちが次々と帰っていく中、瑛士は一人ボールを蹴り続けていた。心の中にモヤモヤしたものがあり、それをどう処理していいか分からなかったのだ。
「瑛士!」
遠くから元気な声が響いた。振り向くと、桐谷陽翔が駆け寄ってきた。いつも無邪気で明るい陽翔の姿に、瑛士は自然と笑みがこぼれた。
「今日も一緒に帰ろうぜ!」陽翔は笑顔でそう言った。
瑛士は一瞬、迷いを見せたが、すぐに「そうだな」と応じた。いつものように、二人で帰ることになったが、今日の瑛士はどこか浮かない表情をしていた。
二人は静かに歩き始めたが、陽翔はふと瑛士の様子がいつもと違うことに気づいた。
「お前、どうしたんだよ?」陽翔が尋ねた。
「いや、別に…ただ、少し考え事してただけだ」と瑛士は短く返す。
陽翔は、瑛士が何かを隠していることに気づいたが、無理に聞くことはなかった。それでも、陽翔は心の中で不安を感じていた。自分が瑛士にとってただの「友人」以上の存在でないことに、気づいてしまったのだ。
その夜、瑛士は自分の部屋で考え込んでいた。彼はいつも強く、周りを引っ張るリーダー的な存在でいようと努めてきた。しかし、最近は自分が本当に何を望んでいるのか分からなくなっていた。
「俺は、何を考えているんだ…?」瑛士は自分の心に向き合おうとするが、それが簡単ではないことに気づく。
翌日、瑛士は放課後のグラウンドでまた一人で練習をしていた。そこに再び陽翔が現れた。
「瑛士、俺、お前に聞きたいことがあるんだ」
瑛士は驚いたが、「なんだ?」と冷静に返す。
陽翔は一瞬言葉を詰まらせたが、思い切って口にした。「俺、お前と一緒にいると…なんか、違う気持ちになるんだ。」
瑛士はその言葉に驚きながらも、自分の心の中でも同じような感情が芽生えていたことを思い出した。
次回予告:
桐谷陽翔の告白によって、相馬瑛士の心もまた揺れ動く。二人の間に新たな感情が生まれ、友情はさらに複雑なものへと変わっていく。
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