秋の夜風が肌を撫でるように吹き、聖風学園の屋上からは星空が広がっていた。椎名悠真は、手すりにもたれかかりながら、無言でその景色を見つめていた。ふと横を見れば、相馬瑛士が隣に立っている。二人でこうしている時間が、最近では一番心が落ち着く瞬間だった。
「こんなに星が見えるのは珍しいな」
相馬がそう言って、ふわりと微笑む。いつも冷静で強気な彼の表情が、今夜はどこか優しげだ。悠真は、相馬のその笑顔に心が少しだけ温かくなるのを感じた。
「君とこうして話すのも悪くない」
そう静かに言葉を漏らす相馬に、悠真は一瞬驚いたが、すぐに頬を紅く染めた。彼の不意の言葉が、胸の奥で静かに響く。相馬瑛士という存在が、いつの間にか特別なものになっていることに、悠真は戸惑いを隠せなかった。
「相馬…君って本当にわからないよ」
悠真は軽く肩をすくめながら言うと、相馬は少し困ったような表情を見せた。それでも、二人の間には特有の静けさが漂い、言葉にできない思いが交錯していた。
「悠真、俺はお前を守りたいんだ」
その一言は、悠真にとって衝撃的だった。自分にそんな風に向き合ってくれる人がいるとは、思ってもいなかったからだ。胸が詰まるような感情を抱え、悠真は相馬に視線を向けるが、彼は星空を見たまま、淡々と話し続ける。
「お前は一人じゃない。俺がいる」
その言葉に、悠真はようやく自分の思いを自覚した。相馬が隣にいることが、今の自分にとってどれだけ大きな意味を持つのか。胸の中に芽生えた小さな感情が、彼の心を温めていた。
「ありがとう…相馬」
そう言って、小さな声で礼を述べると、相馬は静かに微笑んだ。その笑顔は、二人の距離をさらに縮めるようだった。
次回予告:
悠真と相馬の絆が深まる中、北条和馬の心にも複雑な感情が芽生え始める。それぞれが抱える思いが交差する中、物語は次第に大きな転換点を迎える。次回、彼らの関係が大きく動き出す…!
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