夜の屋上から見上げた星空は、まるで彼の心を映し出すかのように静かに瞬いていた。椎名悠真は、隣に立つ和馬を横目に、ふと小さく息を吐く。彼の隣にいることは、安心感と同時に複雑な感情を呼び起こす。「ここにいてもいいのか?」と、無意識に自問してしまう悠真の心。和馬の穏やかな横顔を見つめながら、彼の言葉を思い出していた。
「悠真、俺はお前の味方だ」
その言葉に込められた真意を、悠真はまだ完全には理解できていない。和馬はいつも優しく、だがそれがかえって悠真の胸を締め付ける。「何もかも知っているわけではない」と彼の脳裏に浮かぶのは、篠原の存在だ。篠原の不意な接近、そして彼の謎めいた行動が、悠真の心をかき乱していた。
「何を考えてる?」
和馬が静かに問いかけた声が、悠真の耳に届く。彼はわずかに微笑み、答えようとするが、口を開いたその瞬間、携帯が震えた。篠原からのメッセージだった。
『今夜、会いたい』
簡潔なその言葉が、悠真の心に波紋を広げる。思わず携帯を握りしめると、和馬の視線が鋭くなったのを感じた。
「誰から?」
その問いに、悠真は返答に迷う。和馬と篠原――二人の間で揺れ動く自分をどうしたらいいのか。立ち尽くす悠真に、和馬は一歩近づき、優しく肩に手を置いた。
「無理しなくていいんだ、悠真。お前の選択はお前のものだ」
その言葉は温かいものでありながら、悠真の胸に重くのしかかる。彼の隣で星空を見上げながらも、悠真の心は静かに揺れていた。
次回予告
篠原からのメッセージに揺れる悠真は、和馬との関係にどう向き合うのか。そして篠原が明かす驚愕の事実とは?次回、心の迷いがさらに深まる展開へ――。
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