椎名悠真は、教室の片隅に一人座り、ノートを見つめていた。北条和馬の表情が頭から離れない。和馬が何かを隠していることは明らかだったが、その理由が分からず、悠真の心は焦っていた。
「和馬…君は何を抱えているんだろう…」
そんな風に思いを巡らせていると、突然ドアが開き、和馬が教室に入ってきた。二人の視線が一瞬ぶつかり、気まずい空気が流れる。しかし、悠真は決心したように立ち上がり、和馬のもとへ向かった。
「和馬、ちょっと話せるかな?」
和馬は一瞬躊躇したが、やがて頷いた。二人は廊下に出て、周囲の視線を気にしながらも話を始めた。
「最近、君が何か悩んでいるのはわかる。僕に話してくれないかな?」悠真が優しく問いかける。
「悠真、僕のことなんて気にしなくていいよ」と和馬は冷たい口調で答えた。しかし、その瞳にはどこか哀しさが漂っていた。
「僕は君のことをもっと知りたいんだ。君が何を感じているのか、僕に教えてほしい」悠真の真剣な瞳に、和馬は一瞬言葉を失う。
「…実は、家族のことで少し問題があって…」和馬はポツリと話し始めた。「でも、それを悠真に話すべきじゃないと思ってたんだ。君に迷惑をかけたくないから」
「そんなことない。僕は君の力になりたいんだ」悠真は強くそう言い、和馬の手をそっと握った。その瞬間、和馬の頬に一筋の涙が流れ落ちる。
「ありがとう…悠真」
その言葉は、二人の距離を一気に縮めたかのように感じられた。悠真は和馬の手をしっかりと握りしめ、その温もりを感じながら、互いの存在を確かめ合うのだった。
次回予告
二人の間に生まれた小さな絆。しかし、その絆がさらなる試練を迎えることになる。次回、悠真と和馬の関係に亀裂が入るきっかけが…。彼らの想いはどこへ向かうのか?
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