放課後の静寂を破るように、悠真は一人で教室に座っていた。最近の出来事は彼の心を大きく揺さぶっている。あの日、冬馬との距離が急激に近づいた瞬間が頭から離れない。けれども、それはただの友情なのか、それとも別の感情なのか、悠真にはまだ答えが見つからない。
「どうした、元気ないな?」
教室のドアが開き、冬馬が軽やかな声で入ってきた。彼の無邪気な笑顔が、悠真の心をさらに乱す。冬馬が近づいてくるたび、悠真の心は高鳴り、思わず目を逸らしてしまう。
「別に、何でもないよ。」悠真は曖昧に答えるが、その言葉には自分でも違和感を覚える。
冬馬は悠真の横に座り、しばらく何も言わずにその場の静寂を楽しむようにしていた。二人の間に流れる空気はどこか緊張感を帯びている。ふと、冬馬が低い声でつぶやいた。
「俺、最近お前のことばっかり考えてるんだよな…」
その言葉に悠真の胸が締めつけられる。今まで彼の中に潜んでいた感情が一気に溢れ出そうになる。しかし、理性がそれを押しとどめ、笑顔でごまかすことしかできなかった。
「変なこと言うなよ。俺たち、友達だろ?」
冬馬は悠真の言葉に困惑した表情を見せたが、すぐに柔らかい笑顔に戻り、肩を軽く叩いた。
「そうだな、友達だ。」
しかし、その瞬間、冬馬の瞳に一瞬だけ見えた寂しげな光に、悠真は気づいてしまった。冬馬が本当に何を感じているのか、そして自分自身の気持ちが何なのか、悠真はもう逃げることができなくなっていた。
次回予告
悠真の中で芽生え始めた冬馬への特別な感情。友達として振る舞い続けることができるのか、それとも関係が変わるのか――。次回、「揺れる感情、交差する視線」。冬馬の本当の気持ちが明らかに!
コメント