篠原の言葉に揺さぶられた悠真は、彼自身の心が再び葛藤に包まれていくのを感じていた。篠原の視線は、何かを知っているようで、悠真の胸に疑問と不安を呼び起こす。「本当に和馬は僕を信じているのか?」その思いは、和馬の優しさや温かさを思い出すたびに打ち消される。しかし、どうしても心の奥底に残る不安は拭い去れない。
放課後、和馬とふたりきりになったとき、悠真は勇気を振り絞って口を開いた。「ねぇ、和馬……僕たち、本当に大丈夫かな?」不安げな声が響くと、和馬は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに優しい笑みを浮かべて悠真の肩を抱き寄せた。
「悠真、君のことを疑ったりなんてしないよ。僕にとって君は、かけがえのない存在なんだ」と、和馬は静かに語りかける。その言葉は真実味に溢れ、悠真の心を包み込むように温かかった。しかし、その優しさに包まれながらも、悠真の胸には篠原の言葉が刺のように残っていた。
「でも、篠原が言ってたこと、気になるんだ…」悠真は言葉を絞り出すように続ける。和馬は一瞬、目を細めたが、悠真の手をぎゅっと握りしめた。「他人の言葉に惑わされるな。僕が君を信じてる、それだけでいいじゃないか」
その夜、帰宅した悠真は一人、ベッドに横たわりながら、和馬の言葉を何度も反芻した。信じたい、和馬の気持ちを。そして、自分自身の気持ちを――。揺れる心を抑えきれないまま、悠真は窓の外に輝く星を見つめ、静かに目を閉じた。
次回予告
和馬の言葉を信じようとする悠真だが、篠原の真意を確かめるべく、次第に動き出す。そして、隠された真実が、二人の関係に新たな波紋を投げかけることになる。和馬と悠真が選ぶ未来とは――。
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